💊薬と人のあいだ 13|日本人は、なぜお風呂に何かを入れたがるのか?

白いうさぎが静かに目を閉じて座るイラスト。温かいお風呂と入浴剤の香りに包まれ、心と身体をゆっくり休める癒やしの時間を表現している。

子どもの頃。

お風呂の楽しみは、バスクリンだった。

今日は緑色。

今日はオレンジ色。

お湯の色が変わり、香りが広がる。

それだけで、いつものお風呂が少し特別になった。

日本では、湯船に入る前に体を洗う。

かけ湯をして、汚れを流してから入る。

そして家族で同じお湯を共有する。

お風呂は、体を洗う場所というより、温まり、くつろぐ場所なのかもしれない。

だからだろうか。

日本には、たくさんの入浴剤がある。

炭酸系。

生薬系。

温泉の素。

そして保湿を目的にしたもの。

旅行先で入った温泉を、家でも楽しみたい。

そんな気持ちが商品になっているようにも見える。

海外にもバスソルトやアロマバスはある。

硫黄の香りがする温泉も世界各地に存在する。

ただ、日本のように「温泉地の名前が書かれた入浴剤」を買い、家で温泉気分を楽しむ文化は少し珍しいのかもしれない。

最近は、保湿をうたった入浴剤も増えた。

乾燥する季節。

年齢とともに変わる肌。

そんな悩みに寄り添う商品も多い。

子どもの頃の私は、色と香りしか見ていなかった。

けれど大人になると、

温まりたい人がいる。

香りで気分転換したい人がいる。

温泉気分を味わいたい人がいる。

肌の乾燥を防ぎたい人もいる。

求めるものは違っても、

「お風呂の時間を少し心地よくしたい」

という気持ちは同じなのかもしれない。

「病は気から」

という言葉がある。

香りで病気が治るわけではない。

入浴剤だけで健康になれるわけでもない。

それでも、

今日はゆっくりお風呂に入ろう。

そう思えるだけで、少し救われる日もある。

薬が身体に働きかけるものなら、

入浴剤は、身体と気持ちの両方に寄り添うものなのかもしれない。

子どもの頃の私は、効能なんて気にしていなかった。

ただ、

今日は何色のお風呂かな。

それが楽しみだった。


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