YUMEVOJAお遍路一人旅 − エピソード0:旅立ちの準備

八十八か所巡りに挑戦しようと決めたとき、私は何も知らない初心者でした。
手がかりにしたのは、ネットで購入した一冊の本。ページを開けば、道のりや作法が書かれていて、「これを読めば何とかなる」と心の支えにしていました。今思えば情報は古く、実際の旅では苦労するのですが、それでもその本は、私を最初の一歩へと導いてくれた存在でした。

当初の計画では、JR阿波大谷駅から風情ある道を歩きながら1番札所に向かうつもりでした。
けれど小さな無人駅には車を停められず、結局、直接一番札所まで車で向かうことに。理想どおりにはいかない、そんなスタートでした。

境内に隣接する巡礼用品取扱所で、白衣、菅笠、数珠、納経帳、納札、線香、ロウソク、ライター、教本といった最低限の装備を整えました。
お店の方は「これで十分ですよ」と優しく声をかけてくださり、簡単な作法も教えてくれました。さらに「車をしばらく停めさせていただきます」とお願いすると、快くうなずいていただけたのも心強い出来事でした。

私は関西から車で四国に入り、そこからは電車・バス・船を組み合わせ、可能な限り歩くことを目指しました。
今では車やバスで巡る“歩かないお遍路”が主流ですが、私にとっては「できるだけ自分の足で歩くこと」が旅の実感につながっていました。

とはいえ、完全な歩きお遍路は、今の私には時間的に無理。
そこで選んだのが「区切り打ち」でした。仕事や生活の合間を縫って出かけるため、必ず予定通りに帰らなければならず、その緊張感は半端ではありません。
ときには「本当に間に合うのか」と不安になることもありました。
それでも、少しずつ歩みを積み重ねることで、自分のペースで巡礼を続けることができました。

白衣に袖を通し、菅笠をかぶり、数珠を手にした瞬間、まだ一歩も歩いていないのに、すでに旅人になった気がしました。
けれど、心の中には大きな不安もありました。続けられるのだろうか、自分に務まるのだろうか。
緊張と期待が入り混じり、とても写真を撮る余裕はありませんでした。

この日の私は日帰り。
帰路につくころ「この経験をブログに残していこう」と思いつきます。
写真が一枚も残っていないことに気づきましたが、不思議と悔しさはありませんでした。
むしろ、記録よりも大切な“体験そのもの”を胸に刻んだような気がしたのです。

ここに載せているのは、一年間を共に歩んだ今の装備です。
白衣は暑さに耐えられず、途中で自分で袖をほどいて取り外しました。
区切りのたびに少しずつ装備を買い足し、それを“自分へのご褒美”としてきました。
ひとつひとつの品に、そのときの思い出が刻まれています。

「一年共に歩んだ装備。袖を取った姿も、今では旅の歴史を物語っています。」

ほどいた袖は捨てずに縫い合わせ、小物入れへと生まれ変わりました。
腰に巻けるようにしてあり、数珠・ろうそく・ライター・線香、納札・賽銭袋が収まるように区切っています。お参りで必要な順番です。納経帳も入れられます。
市販品にはない、まさに“非売品の優れもの”。
巡礼の必需品をまとめて身につけられるこの袋は、今も私の旅を支えてくれる大切な相棒です。

「白衣の袖から作った腰巻き小物入れ。順に巡礼小物がセットできる、唯一無二の品。」

こうして私のお遍路一人旅は、第一歩を踏み出しました。
次回は、いよいよ一番札所の境内に足を踏み入れる、その瞬間のことを綴ります。

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